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2018.03.19

荒木経惟 「私、写真。」 丸亀猪熊弦一郎現代美術館

今年、78歳になる「アラーキー」こと荒木経惟「私、写真」展が、
丸亀猪熊弦一郎現代美術館で開催されています。

残りの人生を考えて、とにかくやたらと展覧会をやっています、そのひとつ。
 
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ぼくが、中学生の頃には、その当時のぼくには到底理解できない、
でも、グロテスクな、なんだか不思議なパワーを持った、
エロチシズムと社会へのメッセージを感じていました。

今回の展覧会は、これまでに撮ったものを、
新たに作品にしているものがほとんど。
 
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現像前のフィルムに、ペイントし印画紙に焼き付けたもの。
プリントしたものをに、ペイントしたもの。
保管の状態が悪く、劣化したフィルムをプリントしたもの。
中川幸夫さんへのオマージュ。
 
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どれも、所謂「キレイ」なものは一枚となく、
そして、それらの全ては、「死」を意識せざるを得ないものでした。

どこか斜に構えた「シニカル」な態度は、荒木さんの社会へ対する、
「世の中そういうもんじゃねーだろ!」というメッセージなのか。
晴れやかな感情とは無縁の、社会の「影」を漂わせるが、
不思議と「愛らしさ」のような感情を抱く。
「死」がレイヤーに重なると、ドロドロとしたものから清涼感が現れる。
 
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学生の頃、荻窪に住んでいました。
大学院の時に、右膝を痛め、隣の駅の阿佐ヶ谷駅の「河北総合病院」に通っていました。
人口過密地域の総合病院なので、診察までとても待ち、
薬をもらうまでも随分と待ちました。
ある時、薬を待っていると、黒いスーツを着こなし、
手入れの行き届いたプレーントゥを履いた紳士が薬を待っていました。
よく見ると、荒木さんでした。
後から考えると、その後亡くなった奥さんの薬をもらいに来ていたのでしょうか。
とにかく、メディアでの荒木さんとは全く印象の異なる、
静かな紳士であったことに驚きました。
 
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ぼくは、良いと感じた「作品」について、誰がどのようにその作品を生み出したのかに
強い関心があります!
病院で観た荒木さんは、破天荒で前衛的な作品のイメージとは全く異なる姿でした。
人間荒木経惟さんは、ぼくが病院の待合で観た姿なのか?
それを確かめたくて、展覧会のオープニング・レセプションに伺いましたが、
残念ながら体調不良につき、欠席でした。
 
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昨年、蜷川実花展を観ていた娘は、すぐに「この写真は凄いね!」と。
「絵画は、いまいちよくわからないけど、これは凄い!」と加えた。

「死」に「清涼感」を漂わせる写真家は、どのような佇まいなのか。
もう一度、生身の荒木経惟さんを見てみたい。

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2018.03.13

建築の原点 安藤忠雄「住吉の長屋」 

娘の大学受験、後は結果を待つばかり。
とりあえず、東京で建築の勉強をすることが決まり、「IKEAに行きたい!」と。

それならばと、ぼくの建築の原点である安藤忠雄作品を観ることになりました。
建築を学び始めた頃、安藤忠雄の「住吉の長屋」を知りました。
バブルに浮かれた百花繚乱の時代に、
禁欲的なコンクリートの箱は、とてつもなく魅力的でした。
 
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鹿島出版会の安藤忠雄の作品集は、生まれて初めて買った建築家の作品集。
コンクリートの壁と、印象的な光。
厳密な幾何学のプラン。
作品集の最後に、小篠邸での安藤さんのポートレイト。
コテコテの大阪弁とは知らず、
フランス語しかしゃべらないんじゃないかと想像していた頃。(笑)

学生時代から、可能な限りの安藤忠雄作品を観て来ましたが、
個人住宅である「住吉の長屋」は、何度か訪れるも辿り着けず。
今回改めて調べるとGoogleマップに!(笑)

住吉大社の近く。
網膜に飛び込んできた「住吉の長屋」は、想像した以上に小さい作品でした!
しかし、とてつもない安藤忠雄の建築への情熱が凝縮した佇まいでした!
雨の日には傘を差さないと、寝室からトイレにいけないなどの、
逸話には事欠かないこの作品は、圧倒的な存在感でした!
 
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その後、未見だった「旧サントリーミュージアム」から、
学生時代に友人の車に乗り合わせて夜な夜な高速道路を走りたどり着き、
向かって左側の斜面を登り覗き込んだ「六甲の集合住宅」。
やはり圧巻の存在感。
 
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北野の商業施設は、存在は知ってはいたものの、
レンガのファサードや三角屋根など、安藤さんらしくないなと
敬遠していましたが、実際に体験すると、
立体迷路に光と陰が錯綜する空間は、安藤忠雄の建築の魅力そのものでした!

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帰路、淡路島の「本福寺水御堂」を見学予定も、時間切れ。
ぼく自身が、建築の魅力を学んでいた頃、
何度も何度も作品集をめくり、空間を想像し、
安藤忠雄の空間に、建築にかける情熱に感化されたことを思い起こされた
有意義な時間でした。
 
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娘は、建築を学ぶことになりますが、親としては、
建築の考え方を示唆すべきではないと考えています。
それは、彼女が時間をかけて自ら獲得すべきこと。
今は、ただ体験につきあうだけ。
ひとりの学生さんであれば、細かく解説しますが、ひたすらに我慢。
これからの彼女の学びに役立つ時間であればと思います。

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