「Black Slide Mantra」
札幌市の中心部、大通り公園に、
イサム・ノグチの黒い滑り台があります。
「ブラック・スライド・マントラ」
モエレ沼公園の計画と同時に、この計画も始まりました。
というよりは、ふたつの公園を分断する道路を指し、
「ここなら置いてもいいね!」と。
ということで、道路は、自らが分断していた
隣り合うふたつの公園をつなげ、そこに設置されました。
1986年のヴェネツィア・ビエンナーレ、アメリカの作家として選ばれたイサム・ノグチは、古典的なアメリカ館の前に、
白い大理石でつくられた、滑り台「スライド・マントラ」を作成。
冬の雪景色の中でもその存在を示すよう、黒い花崗岩でつくられたのが、
「ブラック・スライド・マントラ」です。
後ろの穴から螺旋状に階段を上り、螺旋の滑り台を滑り降り、
そのまま壁づたいに数歩行くと元の穴に戻るという、
無限の循環運動になっています。
制作段階で、何度も滑り台を滑り、そのスピードを指示したようで、
いわば、追っかけのようにしていた安田侃さんに、
「芸術とは、子供のお尻で感じるものですよ!」と、
いたずらっぽくおっしゃったようです。
白くやわらかい大理石とは違い、黒い花崗岩は、
周囲の気を集めるかのような存在感を放っています。
高松のイサム・ノグチ庭園美術館に「エナジー・ヴォイド」という作品がありますが、それと同じように、深みのあるツヤの出る一歩手前のマットな仕上げ。
それはどこか、記憶と重なるもので、50歳で稼業を息子たちに任せ、
引退し、書道家となったおじいちゃんが、学校で買ったぼくが使っているものとは明らかに違う「硯(すずり)」に、墨汁ではなく、墨を擦った時の、吸い込まれるような黒。
それは、威厳に満ちた表情を生み出しています。
ぼくが、ここを訪れたのは、北海道に前代未聞の台風が上陸した翌日。
早朝、ホテルから、ジョギングを兼ねてこの場を訪れました。
滑り台には、やや水滴が残っていましたが、そんなことを気にも止めず、
滑り出すと、水滴のせいか、ウォータースライダーの如き猛スピードで、あっという間に地面に放り出されました!
一瞬の出来事で、驚きましたが、同時に恥ずかしく、
周囲に人がいないことを確認し、濡れた衣服に気づかれないように、
人通りの少ない道を選んで、命からがらホテルにたどり着きました!
貴重な体験でした!
ちなみに、翌日、通常の状態でリベンジしたことをお伝えしておきます。

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