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2011.10.28

瀬戸内の水平線

瀬戸内海の魅力は、点在する島々の陰影が織りなす、
その多島美にあると言われます。

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その瀬戸内海に、さらに突き出した庄内半島は、
「浦島太郎伝説」の舞台であり、「紫雲出山」があり、
玉手箱にちなんだ「箱」という地域もあります。

その西側が仁尾町。
その東側が詫間町。

詫間町の細川病院の香川さんとご縁があり、
病院の改修から始まり、集合住宅「unite」を依頼していただき、
女流建築家のパイオニア 林雅子さん設計の自宅の
メンテナンスの相談も受けています。

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http://yharch.cocolog-pikara.com/blog/2008/02/post_307c.html
http://yharch.cocolog-pikara.com/blog/2011/05/post-cfe9.html


その香川さんからご紹介いただいたのが、
仁尾町の「Veranda Glass House」の岩本さん。

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http://yharch.cocolog-pikara.com/blog/2010/11/verandaglasshou.html

若い頃からデザインを学ばれて、美術や骨董に精通し、
大変な建築通でもあります。

会話の中には、国内外の新旧の建築家の名前が次から次に出てきます。
また、ジョン・ポーソンと小川晋一の共通性についてなど、
お話の内容も核心をついていて、そして、好みがハッキリしています。

いつも元気で、溌剌としていた岩本さんが、昨年、工事に掛かる段で、
大病を患い入院され、大変心配していましたが、竣工間近に、
久しぶりに現場を訪れた岩本さんは、「はやっさん!ええな~!」と、
その場から再び元気な声でお電話をいただきました。

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出来上がりを大変喜んでいただいたようで、
ブラインド工事をいつもお願いしている、中学の同級生、
タチカワ・ブラインドの池田英彰からも、
岩本さんが喜ばれていた様子と、
ふたりで盛り上がったことの報告を受けました。

その岩本さんが、今年、再び体調を崩され、
夏に、亡くなられました。

母と同じ歳の岩本さんには、息子のように可愛がっていただき、
それよりも、自分が生きている存在意義である、
建築家としてのぼくを深く評価していただいているのが伝わり、
特別な存在の方でしたから、残念でなりませんでした。


岩本さんは、計画が始まるとすぐに、詫間町の「B Guest House」も
紹介していただきました。

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http://yharch.cocolog-pikara.com/blog/2010/12/post-a253.html


ふたつの建築を結ぶように、海に面した道路から、
半島を縦断する道の分岐点、仁尾町側。


そこからの瀬戸内海の眺めは、瀬戸内海とは思えないほど、
島が少なく、天候によっては、水平線が現れます。

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Veranda Glass House」の木立の向こうにも、
ときどき、水平線が現れたことでしょう。

いつまでも、岩本さんがぼくのことを自慢できるように、
建築家として精進し続けることを、
水平線の向こうの岩本さんに誓いたいと思います。


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2011.10.19

「やまうちうどん」

「さぬきうどん」ブームの火付け役となった名著「恐るべきさぬきうどん」。
その第一巻の冒頭を飾るのが「やまうちうどん」である。

そのコピーは、「人の接近を拒むかのごとく」。(笑)

その通り、ここへ「うどんを食べに行く」という明確な目的がない限り、
決して偶然には辿り着けないところにあります。

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田舎の山間の、線路と平行に走る道に、突然「うどん」の看板!
これを見逃すと、たどり着けません。(笑)

そこから、山側へ線路を渡って、またも出てくる看板の先を
不安になりながら道を登ると、そこに現れます。

大量の薪が積まれ、そして「うどん」の看板が。
この看板、白地に「うどん」と書かれているのですが、
うっすらと下地に模様が。

これ、「コカ・コーラ」だと思ってましたが、「ガーナ・チョコレート」でした。(笑)

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「宮武系」のねじれて、強いコシのあるうどんは、うまい!

そして、ぼってとした分厚いころもの「藤原」のてんぷら。
ぼくは、ゲソ!
これを、うどんを食べた後、しょうゆをつけて、
さらにダシにつけて食べるのが好きです!

しかも、根元の方から食べるのですが、途中で身ところもが
分離しそうになるのを堪えながら食べます。

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高松の「あたりや」の大将が修行したのがここ。

「あたりや」がオープンした時には、そのうどんのあまりの凄さに騒然となり、
「神様のうどん」と称するうどん通もいました。

その「あたりや」の大将をもってして、薪でつくるうどんは格別であると。

薪のお風呂は、からだの芯までしっかりあったかくなります。

朴訥として素朴な、強いコシのある、洗練とはほど遠いうどんは、
薪でつくるせいか、からだの芯まであったかくしてくれます!


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2011.10.14

「杉本博司 アートの起源 ❘ 宗教」

丸亀猪熊弦一郎現代美術館では、一年館にわたり、
杉本博司の展覧会を開催しています。

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「科学」「建築」「歴史」ときて、最終幕「宗教」。

「アート」すなわち「芸術」とは、その「起源」においては、

「宗教」とは不可分であることを、歴史が伝えてくれます。

「宗教」とは、ある時期のある民族における、
世の中の成り立ちの体系そのもので、
そこに具体的なかたちを持つ、絵画や彫刻、建築などは、
その世界観を移していると言えます。

今回の展示では、「宗教」というタイトルから直接的に連想される、
まず、「十一面観音立像」と「キリスト胸像」。
これは、ニュー・ヨークで古美術商を営んでいた、
杉本さんならではのコレクション。

そして、三十三間堂の千手観音立像が10段100列に並ぶ様を、
写し取った、「仏の海」。

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しかし、最も興味深いのは、ぼくが杉本さんの作品の中でも
もっとも好きな作品である「海景」=「Seascape」です。

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「原始人の見ていた風景を、現代人も同じように見ることは可能か」と、
自問した杉本さんは、海にそれを見出し、
太古から変わらないであろう海を撮影しています。

中央に水平線をはさみ、海と空が上下に切り取られています。

遠目には、単なる「白」と「黒」の同じ構成のものが並んでいますが、
それは、世界の7つの海を写しているという作品が
直島のベネッセハウスのテラスにあります。

近づいてよく見比べると、波の形状など、違いがはっきりとわかります。

このコンセプチュアルな作品に衝撃を受けましたが、
森美術館での作品展では、それに留まらない多様な表情を
見せつけられました。

今回は、そのダイジェストで、まったく違った表情の「海景」。

真っ白な作品もあれば、真っ黒な作品もあり、実はそれが同じ海であり、
展示室の吹抜けを挟んだ向かい合った位置に展示されています。

展示の構成を考えるうちに、建築に興味を持った、
という杉本さんの展示の構成は非常に建築的で、

それ自体が作品の意図と合致していて、とても興味深いものです。

その「海景」を、「五輪塔」に収めた、「海景五輪塔」は、
とても興味深いものでした。

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宇宙を司る「空・風・火・水・地」にそれぞれ幾何学をあてた
小さな「五輪塔」の球の部分に「海景」のフィルムを挟み込んだ作品。

正面から意識してみないと、その「海景」は現れず、
同じものがただ並んでいるようにしか見えません。

ですから、観始めるとすぐに、美術館の人が飛んで来て、
そのことを説明してくれます。

しかも、光量の異なるフィルムの表と裏では、
違った表情を見せてくれます。


2階の猪熊さんの常設展のオブジェの展示が変わっていました。

石を並べたもの。

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展示の方法は、猪熊さんの指示があったんだろうか、
などど想像しながら観ました。

3階のカフェの前のテラスは、雨に打たれて、
打ち水をしたように、雨ならではの表情を見せてくれました。

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2階の奥の美術館の図書館。

ここは、質の高い書籍が並べられています。

いつも誰もいなくて、ゆっくりと贅沢な時間を過ごせます。

建築の書籍もあって、高価な建築家の図面集があり、
初めて、自分の作品を設計する際に足しげく通い、
穴があくほどみたことを思い出します。


それにしても、この美術館は、贅沢な美術館です。


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2011.10.11

「谷川米穀店」

「さぬきうどん」を意識して食べ初めてから、
うどんの話になると、「それで、どこが一番うまいんですか?」となります。

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うどんの魅力は、「小麦粉・水・塩」、たったこれだけの材料から、
違った食べ物であるかの様な、多種多様な味わいがあるところにあります。

けれども、どう考えても感動的に、そして絶対的にうまい
さぬきうどんの頂点に君臨する店が存在します。

それは、「山越」と「谷川米穀店」です。

ぼくは、このふたつのうどんを「両横綱」と位置づけています。


その「谷川米穀店」です。

琴平から徳島方面へ向かう438号線を土器川に沿って南下し
「こんなところにうどんやさんがあるんだろうか?」と不安になる頃に、
川沿いに行列が見えたら、そこが「谷川米穀店」です。

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写真のときは、平日の開店直後ですから空いてました。

土曜や祝日だと、確実に1時間は並びますから、
先に一軒寄ってから行くことをおススメします。

いくら、心休まる土器川の上流を眼下にマイナスイオンを浴びながら
絶品のうどんに心馳せたとしても、さすがに1時間並ぶと
例外なく殺気立ってきますから。(笑)

この店には、「ダシ」がありません。

テーブルのしょうゆ・酢・一味、そして豊子おばあちゃん特性の
「青トウガラシ」をお好みでブレンドしながら食べます。

ぼくは、酢としょうゆ、そして「青トウガラシ」。

「青トウガラシ」は辛いので、どんぶりの底で、
酢としょうゆと混ざるようにして食べます。

端的に言うと、うどんの魅力は「コシ」だけではないことを
このうどんは教えてくれます。

「コシ」では、まったく説明がつかないうどんなのです。

 

「うどん」はそれをつくる「人」が出ます。

「谷川米穀店」の人たちの、素朴で飾らない、でも細やかな「人柄」が
そのまま「うどん」に現れています。

しかも、そのうどんが香川で最もおいしい「うどん」であることに、
「さぬきうどん」の奥深さを感じます。

 

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