瀬戸内の水平線
瀬戸内海の魅力は、点在する島々の陰影が織りなす、
その多島美にあると言われます。
その瀬戸内海に、さらに突き出した庄内半島は、
「浦島太郎伝説」の舞台であり、「紫雲出山」があり、
玉手箱にちなんだ「箱」という地域もあります。
その西側が仁尾町。
その東側が詫間町。
詫間町の細川病院の香川さんとご縁があり、
病院の改修から始まり、集合住宅「unite」を依頼していただき、
女流建築家のパイオニア 林雅子さん設計の自宅の
メンテナンスの相談も受けています。
http://yharch.cocolog-pikara.com/blog/2008/02/post_307c.html
http://yharch.cocolog-pikara.com/blog/2011/05/post-cfe9.html
その香川さんからご紹介いただいたのが、
仁尾町の「Veranda Glass House」の岩本さん。
http://yharch.cocolog-pikara.com/blog/2010/11/verandaglasshou.html
若い頃からデザインを学ばれて、美術や骨董に精通し、
大変な建築通でもあります。
会話の中には、国内外の新旧の建築家の名前が次から次に出てきます。
また、ジョン・ポーソンと小川晋一の共通性についてなど、
お話の内容も核心をついていて、そして、好みがハッキリしています。
いつも元気で、溌剌としていた岩本さんが、昨年、工事に掛かる段で、
大病を患い入院され、大変心配していましたが、竣工間近に、
久しぶりに現場を訪れた岩本さんは、「はやっさん!ええな~!」と、
その場から再び元気な声でお電話をいただきました。
出来上がりを大変喜んでいただいたようで、
ブラインド工事をいつもお願いしている、中学の同級生、
タチカワ・ブラインドの池田英彰からも、
岩本さんが喜ばれていた様子と、
ふたりで盛り上がったことの報告を受けました。
その岩本さんが、今年、再び体調を崩され、
夏に、亡くなられました。
母と同じ歳の岩本さんには、息子のように可愛がっていただき、
それよりも、自分が生きている存在意義である、
建築家としてのぼくを深く評価していただいているのが伝わり、
特別な存在の方でしたから、残念でなりませんでした。
岩本さんは、計画が始まるとすぐに、詫間町の「B Guest House」も
紹介していただきました。
http://yharch.cocolog-pikara.com/blog/2010/12/post-a253.html
ふたつの建築を結ぶように、海に面した道路から、
半島を縦断する道の分岐点、仁尾町側。
そこからの瀬戸内海の眺めは、瀬戸内海とは思えないほど、
島が少なく、天候によっては、水平線が現れます。
「Veranda Glass House」の木立の向こうにも、
ときどき、水平線が現れたことでしょう。
いつまでも、岩本さんがぼくのことを自慢できるように、
建築家として精進し続けることを、
水平線の向こうの岩本さんに誓いたいと思います。
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