house so
この住宅のご主人は、同業者でした。
同じく建築の設計をしている人です。
独立して3年目。
大学の講師の話が現実的になくなり、
設計事務所として生活していかないといけないという状態で、
自分の考え方の幅を拡げたいと考えていた時期。
父が、友人の商業施設のデザイナーが建築設計者の協働者を探していて、
やってみたらどうかと。
専門学校での講師以外に仕事はなかったし、向学のために手伝うことに。
小さな店舗から大きな商業施設や、中国の公共施設まで
ものすごいスピードで仕事をする事務所でした。
その中で、特にコンピュータに精通し、画像処理やグラフィックも得意な、
若い男性スタッフだったのが、今回のクライアント。
ぼくがその事務所と仕事をしたのは1年足らずでしたが、
美術の出身で、色々と考えることも多かった彼。
所長以外は女性スタッフばかりの中で、
年長のぼくとは、色々と話しをしました。
ぼくにとっては、母が末期ガンだと分かり夏には亡くなったのもこの時期で、
彼が結婚したのもこの年でした。
その後、マンションを主に手掛ける事務所に転職したことなど、
年賀状を通して近況報告は互いにありましたが、
連絡があり、今回の計画が始まりました。
ご主人が自信で考えたものを、ぼくがフォローすることも提案しましたが、
これまでのぼくの仕事も見ていてくれて、
仕事としてぼくにお願いしたいとのこと。
うれしいことですが、プレッシャーが掛る状況。
けれども、要望をくみ取り、ぼくの考えを伝えるという
特別なことはせずに、普段通りのやり方で進めました。
敷地は、ぼくの通った中学・高校のすぐ近く。
土地勘もあり、マンションも建ち並ぶ人気のエリアの住宅街。
密集する中で、プライバシーを確保するために、2階にリビングを設け、
中庭を介して、各室がゆるやかにつながる空間構成としました。
やさしいご主人は、奥さんの意見も十分に尊重しながらも、
設計に携わる人間らしく、細部にも様々な提案がありました。
外からはやや閉じた感じでしょうが、
周囲と調和し、光と風を存分に感じる、
豊かな空間を提供できたのではないかと思います。
The comments to this entry are closed.
Comments