ジョージ・ナカシマ記念館
石を知り尽くした作家がイサム・ノグチなら、
木を知り尽くした作家がジョージ・ナカシマである。
ともに、日系アメリカ人で、アメリカに制作の拠点を持ち、
比肩することのない深い洞察力と熱量に満ち満ちた作品を生むふたりが、
日本での制作現場を同じ牟礼町に選んだことには
言葉にならないほど感慨深いものがある。
柳宗悦の「民芸」に対し、より職人に根ざした「民具」という
着想を得た流政之が「讃岐民具連」を結成し、
ジョージ・ナカシマを香川に連れて来た。
建築家としてスタートしたジョージ・ナカシマは、
生産のすべてをコントロールすることへの限界を感じ、
木の本質を射抜く如く、家具をつくりはじめる。
木の表情や風合いそのものを生かしながら、
木の力を引き出しながら作品へと昇華する姿勢は
イサム・ノグチの石へのそれと通じる。
イサム・ノグチが石工としての和泉正敏氏を信じ、示唆を得たように、
ジョージ・ナカシマは母国での家具の生産を永見真一氏に預けた。
桜製作所が、ジョージ・ナカシマの家具を生産するようになって以来、
永見氏は、ジョージ・ナカシマの作品を展示する記念館の構想を持ち、
建築家であったジョージ・ナカシマは、草案のスケッチを描いた。
先月、長年の思いがようやくかたちとなり、
「ジョージ・ナカシマ記念館」がオープンした。
近年、益々濃い活動を共にする、香川県建築士会高松支部青年部会で
見学会を主催し、社長の宏介氏に案内していただいた。
実は、これまで、遠方よりの客人が見たいと言えば、
忙しい中、工場の見学も含めてお願いをしてきた。
これまではフォワイエに、完成した作品は無造作に置かれ、
それよりも工場を案内していただく時間が
何よりも贅沢に感じていました。
同じく、ものすごい数の作品になるのを待つストックは圧巻!
しかし、今後は混乱を避けるために、工場への案内はしないようだ。
独特の和みながらも緊張感のある、気軽に話しかけてはならない
あの空気が味わえなくなるのかと思うと残念でたまらない。
見学会の終わりの時間が近づいたころ、何となく慌ただしい気配。
翌日来る予定だった流政之氏が突然来たようだ。
85歳になるが、皮ジャンを羽織り、眼光鋭く、オーラを発する。
凄味はまだまだ健在のよう。
同じく85歳の永見会長が対応にあたっていたが、
こちらはなんとも柔らかく、朗らかなオーラ。
深く自分の人生を刻んできたふたりが居合わせる瞬間を目の当りにし
この光景には様々な人の思いと熱量が重なっていることを感じた。
※記念館内は写真撮影が不可のため、掲載した写真は転載したものです。
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