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日本の女性建築家の先駆者といえば林雅子さん。
住宅を専門に、ゆっくりと丁寧に建築空間を紡ぐ、住宅作家である。
その林雅子設計の住宅が、香川に一軒だけある。
猪熊弦一郎現代美術館で行われた谷口吉生展の
谷口吉生本人による自作を巡るツアーの昼食の際、
その林雅子さん設計の住宅に住まわれる方と同席した。
名刺を出し、挨拶をし、建築設計を生業とし、「林」という姓であることを理解し、
「あなたも林さんなの?」と、林雅子大先生と比較され、やや見下された(笑)。
山本忠司の弟子であることと、手元にあったぼくの仕事のファイルを見て、
まあまあの建築家であると理解していただいたようである。
その後の、猪熊弦一郎現代美術館での講演会や、
仲間の建築家の展覧会とギャラリートークにも足を運んでいただき、
興味を持っていただいたようで、25年前に建てられた病院の改修の依頼を受けた。
改修といっても、傷んだクロスと床材を張り替える工事。
決める要素これだけだが、工事範囲はかなりある。
建築の仕事は、多分にクライアントの嗜好によって相対的に善し悪しが決まる。
ずいぶん悩んだが、「林さんが、いいと思うように」という言葉をいただき、
結果、満足していただけた。
その後、いろいろな催し物で顔を会わせたり、狭い香川のこと、
共通の知り合いも多く、何かとご連絡いただく機会があった。
ある日、賃貸物件についての相談を受けた。
ぼく自身も、投資目的の賃貸企画物件に強い興味があったので、
まずは、調べてみることにした。
賃貸専門の業者の企画内容は、思っていた以上に建設費が掛かること、
家賃保証や借り上げシステムも、かなり曖昧なものであることなど、
投資する立場からすると、間違えると大きなリスクがあることもわかった。
詫間町という場所柄、いいものだから高くてもという設定にはならず、
ファミリータイプで55,000円×12戸という設定が導かれた。
建設費からすると、通常の専門業者だと鉄骨造となるところだが、
鉄筋コンクリート造でも、工夫すれば可能な範囲。
30年の支払いと入居率を下げないことを考え、鉄筋コンクリー造に。
そして、入居促進を効果的にできる管理態勢を考慮すべきことを伝えた。
利回りも含めた事業計画のお手伝いの中から、
同じお金を使うならその中で最大限魅力的な建築を、
ということで仕事として依頼を受けた。
林雅子さん設計のご自宅のすぐ近く。
「近くにあるだけに、好きな建物でよかった、と毎日思います」
とお手紙をいただいた。
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